
【ジャニス渚】夏の暑い時に冬のあの寒さは、なかなか思い出せない
猛暑の昼下がり、エアコンの効いた部屋にいても、外から聞こえる蝉の声や、
じっとりとした空気に包まれていると、ふと思う。
「あの冬の寒さってどんなだったっけ?」と。
もちろん覚えているつもりではいる。
ダウンジャケットを着込んで、手袋をしても指先が冷たくなって、吐いた息も白くなる…。
でも、なぜだか”実感が伴ってこない。
ただの記憶の断片として、頭のどこかにあるだけ。
夏と冬は、感覚がまるごと入れ替わってしまう。
暑さは、肌の表面にじわりと広がる汗。
日差しが肌を焼いてくる感覚。
逆に寒さは、空気が肌を突き刺すように冷たくて、体の芯が縮こまる感じ。
どちらも身体の深いところに残るはずなのに、なぜか季節が変わると、もう片方を
うまく思い出せなくなる。
それはもしかすると、身体が”今”を生きるようにできているからなのかもしれない。
過去の寒さより、今の暑さに対応することが優先。逆もまた然り。
だから、いくら冬の寒さを思い出そうとしても、肌は「えっ?今30度なんだけど?」と、
まるで違う現実を突きつけてくる。
だけど、ちょっとだけ思い出す工夫はできる。
写真や動画で冬の景色を見る
雪が積もった街、霜で真っ白な草、凍った池、吐いた息が白くなる瞬間…。
視野から入る情報は、意外と感覚を連れてきてくれます。
それでも「あの寒さそのもの」は、暑さ真っ只中ではやっぱり完璧には呼び戻せない。
だからこそ、季節がめぐるたびに新鮮な気持ちになれるのかもしれない。
冬が来たらきっと、今度はこう思う。
「この寒さの中で、夏のあの暑さなんて思い出せないな」って。笑